ミュートを使用したおすすめの曲、プロコフィエフのバイオリンソナタ

前回、ミュートを使用した音を載せましたが、今回は曲の中で実際にミュートを使用しているおすすめの作品を紹介したいと思います。

プロコフィエフ作曲のバイオリンソナタ第1番ヘ短調作品80の第1楽章です。
このソナタは4楽章から成っています。どの楽章もおすすめではありますが、ミュートの効果が一番わかりやすいのは第1楽章だと思い、今回載せることにしました。このソナタの2楽章以外はすべて、ミュートを使用して演奏する箇所があります。

プロコフィエフ(1891~1953)はソビエトの作曲家で、サンクトペテルブルグ音楽院で作曲やピアノを勉強しました。
1番のソナタは彼の晩年の作品です。バイオリニストのオイストラフに献呈されています。

ミュートは第1楽章の後半で使用されます。

プロコフィエフバイオリンソナタ第1番第一楽章のミュート着ける場所
プロコフィエフのバイオリンソナタの楽譜

上から2段目のところにcon sord.(弱音器を使用)と表記があるのでその前の間奏のところでミュートを装着します。
ミュートを着けるところにfreddoと表記があります。冷たいという意味がある楽語です。作曲者は、ここで音色を強く変えたかったために、ミュートを使用したと思います。
プロコフィエフは、この場所をオイストラフに「墓場にそよぐ風のように」と語ったようです。彼は、第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験し、「死」については考えたくなくても、考えざるを得ない環境にあったと思います。

そして晩年のプロコフィエフも病気を抱えていたため、仕事のスピードは遅くなり、自分自身の「死」もそう遠くはないと思っていたはずです。
プロコフィエフの葬儀では、オイストラフがこのソナタの一楽章と三楽章を演奏しました。決して派手さがある作品ではありませんが、内的な美を感じます。

プロコフィエフに献呈されたオイストラフの演奏を聴いていただきたいと思いアップしましたが、古い音源のため、ミュートの音の変化がわかりづらいかもしれないのと、ミュートの着ける場面も載せたかったので、もう一つ、アリョーナ・バーエワの演奏もアップします。

アリョーナ・バーエワは、ロシアのモスクワ音楽院で学んだ若手バイオリニスト。私が学生の頃、有名なエドゥアルド・グラチ教授の秘蔵っ子として、ロシアではすでに有名でしたが、現在は、日本にも度々訪れ、世界的なバイオリニストになっています。アリョーナさん、5分くらいするとミュートを着けて演奏するので注目して下さい!(オイストラフも5分くらいのところでミュート着けてます。)
バイオリン講師 澤井亜衣