ロシアの3大音楽院について

ロシアで専門的に音楽を勉強するとなると、音楽院という5年制の学校で勉強します。
日本でいう音楽大学です。
音楽院には、留学生は高卒の資格がないと入学することができません。
ロシア人は音楽院の付属学校から音楽院へ入学します。

広大な土地のロシアには音楽院はたくさんありますが、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ノヴォシビルスクにある(3大都市)音楽院はロシアの3大音楽院と呼ばれており、レベルの高い授業を受けることができます。

★グリンカ記念ノヴォシビルスク音楽院について

サンクトペテルブルグ音楽院に通っていた時にノヴォシビルスク音楽院から何人か編入してきた生徒達がいました。3つの音楽院の中で私はあまりよく知りません。日本人留学生も一番少ない音楽院だと思います。レーピンやヴェンゲーロフの先生は、ノヴォシビルスク音楽院で教えていたザハール・ブロン教授。ブロン先生はのちにヨーロッパで教えることになります。樫本大進さんや庄司紗矢香さんが門下生です。ロシアメソッドという言葉がありますが、ブロン先生はロシアメソッドを受け継ぐというよりは、独自の教育法だと聞いたことがあります。ブロン先生はモスクワ音楽院(オイストラフ門下)の卒業生です。私の感想ですが弾き方もそこまでロシアっぽくないかなと思います。何がロシアっぽいのか説明しづらいですが。

★リムスキー=コルサコフ記念サンクトペテルブルグ音楽院について

ロシア国立サンクトペテルブルグ音楽院
サンクトペテルブルグ音楽院


入学試験は厳しく、サンクトペテルブルグ出身者でも成績が悪いとサンクトペテルブルグ音楽院に入学できず、地方の音楽院に行くことになります。逆に地方出身でも優秀であれば、サンクトペテルブルグ音楽院に入学することができます。とても優秀であれば、学費は全額免除、奨学金も私が通っていた当時は充実していました。(外国人枠は違います。)

音楽院の隣にはリムスキー=コルサコフの像があります。
サンクトペテルブルグはロシア最古の音楽院。第一期生にはチャイコフスキーがいます。帝政時代にレオポルド・アウアーが教えており、そこからハイフェッツ、ミルシティン、小野アンナ、など素晴らしいヴァイオリニストを世に送り出します。音楽院の教室にはアウアーの肖像画があります。ペテルブルグの教授達はアウアーの奏法をしっかり受け継いでいます。また、ペテルブルグで宮廷ソリストであったヴィエニヤフスキとの関わりも深く、演奏頻度は日本に比べ多いと思います。伝統を大事にする学校です。
ソヴィエト時代はムラヴィンスキー、ショスタコーヴィチが教えていました。指揮科、作曲科は特にレベルが高いと思います。
サンクトペテルブルグ音楽院には在籍していたので、書きたいことが山ほどありますが、今回はこの辺でやめておきます。

★チャイコフスキー記念モスクワ音楽院

チャイコフスキー記念モスクワ音楽院
モスクワ音楽院


こちらが日本で一番有名ではないでしょうか?もちろん、首都にあるということで、生徒数も多く、ロシアの中では一番レベルの高い音楽院になります。
チャイコフスキーが教えていたことでも有名で、4年に1度開催されるチャイコフスキー国際コンクールは、音楽院の大ホールが会場となっています。
教授の数も多く私がロシアに住んでいたころは、ジョージア出身の先生もいました。ヤンケレーヴィチ(アナスタシア先生は孫弟子)、ストリャルスキー(オイストラフの先生)、ヤンポリスキー(コーガンの先生)、よくヴァイオリン曲をアレンジしているモストラスなど名教授が何人かいたので、モスクワメソッドでも色々な奏法があると考えられます。ちなみに、私の好きなサチェンコはコーガンの生徒(クラフチェンコ)の弟子でした。現在はエドゥアルド・グラーチ先生がとても人気です。(ヤンポリスキーの弟子)私が留学していたころ、アリョーナ・バエーバさんはグラーチの秘蔵っ子で一緒に生徒としてサンクトぺテルブルグを訪れていました。
公開レッスンを聴講したことがありますが、とても素晴らしかったです。

ロシアメソッドでも音楽院や先生によっても変わってくると思います。

ロシア3大音楽院の紹介でした。

バイオリン講師
澤井亜衣