3大アヴェマリアのグノーとカッチーニについて

グノーのアヴェマリアは、グノーがバッハの「前奏曲 第1番」を伴奏譜として引用した声楽曲です。なので、バッハ/グノーとプログラムなどで書かれることがあります。この曲もバイオリンでしばしば演奏されます。

この曲はバイオリンの練習曲として演奏することが多いかもしれません。
新しいバイオリン教本3に載っているからです。かなり古い教材ですが、今も人気がよく使用されます。
ゆっくりな曲なので、ボーイング(右手の弓の返し)やヴィブラート(左手の指先を震わせる奏法)の練習にとてもいい曲です。

新しいバイオリン教本3
この楽譜の56番にアヴェマリアが載ってます。

グノーもハイフェッツが弾いたのものがありました。

カッチーニのアヴェマリアは歌詞がアヴェマリアしか出てこない特徴的な曲です。3大アヴェマリアの中で私は一番好きな曲です。
ピアノとバイオリンでずっと演奏したいと思っていて、2年くらい前に楽譜屋さんに問い合わせた時は、海外の出版社からは楽譜が出ていませんでした。その時はバイオリニストの千住真理子さんの編曲の楽譜を購入し、演奏しました。
カッチーニのアヴェマリアというので、カッチーニが作曲した曲だと思っていたのですが、実は旧ソ連時代の作曲家ウラディーミル・ヴァヴィロフが作曲したものでした。私はロシアの音楽が好きなので、アヴェマリアの中で1番好きだったのはだからだったのか!と妙に納得しました。曲調としては、かなり暗いですが、結婚式でも演奏します。

ヴァヴィロフは自分の作品を古い作曲家(ちなみにカッチーニは1551〜1618です。)が作曲したかようにいくつか発表していたようで、その一つがアヴェマリアです。ヴァヴィロフの死後もカッチーニ作曲として演奏されていたため、いつの間にか、カッチーニのアヴェマリアと知れ渡るようになりました。しかし、最近になって、ヴァヴィロフの作品であることがわかりました。

今も、まだカッチーニのアヴェマリアとして広く知られているため、カッチーニのアヴェマリアとして取り上げられることが多いです。

バイオリンの編成は少なかったので、これはロシア人民芸術家のエレーナ・オブラスツォヴァさんのカッチーニのアヴェマリアをアップしました。声を張り上げていないのに、客席まで届いていて、気持ちも込められていて何回聴いても、彼女の世界に引き込まれます。

個人的には、ヴァヴィロフは興味深いです。彼はこれを代表作にして、名声が欲しくなかったのか?カッチーニのような作風が書けるということを証明したかったのか?どうしてもこの作品を世に残す為に、作者が謎のように仕向けたのか?

作曲家が亡くなってしまっては、真実はわかりませんが、神秘的な作品です。

タイトルが同じ、アヴェマリアといっても作曲者によって全然違います。メロディや、リズムが違うだけではなく、その作曲家の想いもそれぞれ。作曲家が曲に対する想いがどんなだったか考え出すとキリがありません。

バイオリン講師 澤井亜衣