3大アヴェマリアの一つ、シューベルトを聴き比べる。

バイオリンは人の声に近い楽器と言われているからか、歌の曲を編曲してバイオリンで演奏することがよくあります。もともとは歌曲であるアヴェマリアもその一つです。
アヴェマリアとは、祈祷文を歌詞にした音楽作品を意味します。クリスマスや結婚式などでよく演奏されますが、特に、カッチーニ、シューベルト、グノーが作曲したアヴェマリアは3大アヴェマリアと言われ、人気があります。

おそらく3つの中で、シューベルトのアヴェマリアが一番有名だと思います。
聴いていてい心地よく、穏やかな気分になる曲です。
シューベルトはたくさんの歌曲を残しています。代表作に「魔王」や「野ばら」などがあります。室内楽曲も「ます」や「死と乙女」などが有名です。

シューベルトのアヴェマリアは多くの編曲者によって、編曲されています。
その中で、お勧めしたいのが、バイオリニスト、ハイフェッツによる編曲です。
バイオリンとピアノの編成です。
ハイフェッツは旧ソ連時代の世界的バイオリニストで、超絶技巧の持ち主です。
僕より今後、素晴らしいバイオリニストは出て来ないだろう。と言ったのだとか…。そのくらい凄いバイオリニストで、私の好きなバイオリニストの一人でもあります。

シューベルトのアヴェマリアの楽譜。ピアノとバイオリン編成(ハイフェッツ編)
アヴェマリアの楽譜。表紙にはハイフェッツの写真。フォームが特徴的。

ハイフェッツは、他にも様々な作品をバイオリンに編曲し、録音を残しています。ハイフェッツ編のアヴェマリアは、低音から始まり、オクターブ上げてメロディを繰り返したり、重音を使用するなど、とても綺麗な編曲です。
自身の演奏もビロードのように音に深みがあって美しいです。

アヴェマリアのハイフェッツ編。ハイフェッツの演奏。

ゆっくりな曲ですが、意外とテクニックが必要で難しいアレンジです。
バイオリンは当たり前ですが、歌詞をお伝えすることができないので、色々な奏法で弾くと、聴いていて変化があって楽しめると思います。

20世紀最高の歌手、マリアカラスのアヴェマリア

原曲と聴き比べてみると、(原曲も素晴らしいし、マリアカラスの歌声もとても綺麗です。)同じメロディーでも演奏形態やアレンジによって感じ方が違うので、新鮮です。原曲の良さを残しつつ、バイオリンが際立つアレンジは聴いていていいなと思います。
次回は他の2つのアヴェマリアについて紹介したいと思います。

バイオリン講師 澤井亜衣