顎のふるわせ方がポイント、ハチャトリアンのバイオリンコンチェルト
私は、卒業試験にハチャトリアン作曲のバイオリンコンチェルトを演奏しました。
ハチャトリアンはロシアのアルメニア系の作曲家です。ロシアの国土は広く、民族や時代によって音楽に違いはかなりあるのですが、ロシアの作曲家は全般的に好きです。
音楽院の2年生くらいの時に、CDで改めて聴いた時に、絶対に卒業試験ではハチャトリアンを弾こう!と決めていました。(今では何故そんなに思っていたのかよくわかりませんが。)今でも、真っ直ぐで、猛突進する曲がカッコイイなと思っています。先生からも反対されず、伴奏者の先生からも私に合っているとお墨付きをいただき(合っているということは、嬉しいのですがこの曲は激しい曲なので、私ってこんなに落ち着きがない?と少し複雑な気持ち)弾くことになりました。
いざ弾いてみると、ハチャトリアンを弾いたのは初めてだったので、ロシアの音楽は弾いていましたが、かなりの感覚が違うもので苦労しました。特に冒頭の部分をどうやって弾いたらいいのか迷いがあり、いつも注意を受けていました。
色んな音楽の先生達からもアドバイスをいただいたものの、なかなか弾けず怒られてばかり。色んな例えや表現をしてくださったのですが、しっくり私の中でこないので、なかなか様になりませんでした。
ある時、レッスンの時にハチャトリアンを弾いていると、先生の友達(オーケストラ団員のバイオリニスト)がレッスン室に入ってきて、「ハチャトリアン弾いてるから、覗いちゃった!オイストラフのように顎をブルルッってふるわせなきゃダメだよ!」とおっしゃってオイストラフのマネをして去っていきました。
オイストラフとは旧ソ連時代のバイオリニストでハチャトリアンがこのバイオリンコンチェルトを献呈した人でもあります。
私はその言葉を聞いた時にとても納得し、頭の中で一枚のオイストラフのCDのジャケットを思い出しました。それがこれです。
いい感じに顎が写っています。
そして、しっかり顎を思い出し、オイストラフみたいに
ブルルッ!
とふるわせて褒められました。
このバイオリニストの一言で私は救われ、卒業試験を無事に終えることができました。すごくわかりやすい伝え方だったので、私もハチャトリアンのコンチェルトを教える時は、この事を生徒に伝えようと思っています。
バイオリン講師 澤井亜衣