エチュード(練習曲)って必要?「カイザー」と「やさしいカイザー」について

今回のテーマはカイザーのエチュードについてです。1年~3年くらいバイオリン歴のある生徒様から「もっとうまくなりたい。」とご相談を受ける際に、エチュードをおすすめします。初心者の方は音階と曲を課題にする方が当教室は多いです。エチュードは色々なものがありますが、カイザーについて書いていきたいと思います。

カイザー(1815~1888)が生きた時代にこの練習曲を考えるということは、当時もテクニックに悩まされている生徒が多かったということがわかります。練習曲は現代のイメージがあるので、カイザーの年代を知った時は意外でした。(昔の方がテクニックのある曲が少ないため、あんまり練習曲がないと思っていました。)

新しいエチュードが次々作曲される中でも今日カイザーを使用するということはやはり非常に優れた練習曲であるということです。曲の中でもテクニックは上達することはできますが、カイザーのエチュードは一曲にあるテクニックが集中的に一つもしくは二つ使用されています。反復することでしっかりと身に付けることができるのが良い所です。

エチュードの中では初心者向けですが、これを完璧にやるとなると相当難しく、時間と労力がかかります。

私がカイザーを勉強していた頃にはありませんでしたが、今は「やさしいカイザー」という楽譜が出版されています。

しかし、この「やさしいカイザー」やさしいのかと思いきや、けっして「やさしいカイザー」というわけではなく、「やさしく見せかけているカイザー」だと私は言いたいです!

理由は、ただカットしてあるだけだからです。

通常版のカイザーは非常に長く、カット印が書いてあるくらいです。あの長さを見るとやる気を失います。(特に子供はそうです。)

「やさしいカイザー」はやさしく見せるため音符も大きい工夫もされていて、目にもやさしいです。
心理的効果っていうものだと思います。
ということで、カイザー13番の楽譜を通常版とやさしい版?で比較してみたいと思います。

明らかに違います。

また、カイザーは色んなバリエーションで弾くのですが、「やさしいカイザー」はそのバリエーションが少ないのも特徴です。

どっちで勉強した方がいいのか?

個人的にも悩みます。やさしいカイザーでも十分ではありますが、バリエーションも色々やってもらいたいですし、カットせずに弾くということも結構大事で、最初は弾けるけど、集中力がなくなったり、疲れてきたりで弾けなくなる場合(特にトリルとか)もあります。

先生の立場としては、レッスンが30分の方は「やさしいカイザー」60分の方は通常「カイザー」など使い分けをしています。生徒の立場であれば、苦手なテクニックの番号を通常版で弾くのはテクニック強化につながると思います。

エチュードは好きな人があんまりいません。私もその一人。でも必要。こういう工夫された教材はとても重要な役割を果たしています。

バイオリン講師 澤井亜衣