映画「四月は君の嘘」で演奏されていた、クライスラーの愛の悲しみ
ホームぺージのごあいさつに、バイオリンは人の声に近い楽器と書きました。それが理由かどうかはわかりませんが、感情のこもった作品がバイオリン曲にはたくさんあります。
ウィーン出身の名ヴァイオリニストで、作曲家でもあるクライスラー(1875~1962)も感情のこもった作品を数多く残した音楽家だと思います。ロンドンデリーの歌などの編曲もしており、素晴らしい作品をバイオリン曲に編曲して、残してくれました。
彼の作品の特徴として、どれも高貴です。中国の太鼓や、ロマンティックな子守唄など、タイトルを見ても、面白そうと思える作品が多くあり、演奏時間も2、3分程度の曲が多く、聴きやすいです。
クライスラーの作品の代表作として、愛の悲しみという曲があります。
広瀬すずさん主演映画「四月は君の嘘」の中で演奏され、さらに有名になったと思います。よくリクエストされる曲なので、今回も新宿にあるバー、トロイメライで演奏することになりました。対をなす作品として、「愛の喜び」という曲があります。リクエストはなかったのですが、せっかく対になっているので比べてもらいたいという思いがあり、これも演奏します。
愛の悲しみは、ウィーン古典舞曲集の中に入っており、1曲目は愛の喜び、2曲目が、この愛の悲しみ、そして3曲目は美しきロスマリンという曲です。
愛の悲しみはウィーンの古いスタイルのワルツで書かれています。なので、悲しみと言ってもそこまで悲しい感じには聴こえないような気がします。
映画「四月は君の嘘」を観たのですが、映画の中ではショットという出版社から出ている楽譜を使用していました。有名な曲は、様々な出版社から出版されていて、愛の悲しみも色々な版があります。
今回、私はショット版で演奏します。
映画を観てこんな表紙じゃなかったと思われるかもしれませんが、これは、ショット版のクライスラーの作品がたくさん載っていている楽譜です。映画の楽譜は、愛の悲しみの一曲だけしか入っていません。
一曲だけで購入する場合は、映画に出てきた表紙のようになります。こんな感じです。
この楽譜はシューマンですが、映画に出てきた楽譜は、こんな表紙だったと思います。
映画で、山崎賢人さんが、ラフマニノフ編曲の「愛の悲しみ」をピアノで演奏しているシーンがあります。ラフマニノフはロシアの作曲家で、ピアニストとしても活躍していた音楽家です。クライスラーと親交があったそうです。ラフマニノフはクライスラー作曲の「愛の喜び」も編曲しています。
そして、クライスラーもラフマニノフの曲を編曲しています。「パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏」という曲です。
お互いの曲を尊敬し、好きだったから、お互いが得意とする楽器で編曲した、ラフマニノフとクライスラーの関係はいいものだなあと思いました。
ラフマニノフはピアニストだったので、バイオリンの曲がとても少ないです。なので、ラフマニノフが好きな私は、ラフマニノフの曲をクライスラーが編曲してバイオリン譜にしてくれたことに感謝です。
9月24日(火)に新宿にあるバー、トロイメライにて20:00〜演奏します。クライスラーの愛の悲しみ、愛の喜びを弾く予定です。お時間がありましたら、是非お越しください。
バイオリン講師 澤井亜衣