モーツァルトの作品は明るいか?暗いか?
作曲家について書かれたオススメの本があります。それがこちらです。
大作曲家の履歴書というタイトルだけあって、本当に履歴書が書かれており、著者がそれに付け加えるように、作曲家について解説しています。簡潔に書かれているのでオススメです。
この本については、また詳しく違う機会に書いてみたいと思います。私がこの本で衝撃を受けたのは、モーツァルトの作曲した約9割は明るい曲だということ。
確かに、モーツァルトの名曲はアイネクライネナハトムジークやディベルティメントなど、どれもこれも明るい曲ばかり。ただ、残りの1割の暗い曲は、普段のモーツァルトでは聴けない特別な感じの曲でもあると思います。
モーツァルトのバイオリン曲もほとんどの作品が明るい曲です。私はどちらかというと暗めの曲が好きなので、正直モーツァルトは苦手なのですが、バイオリン曲で気に入っている曲が一つだけあります。バイオリンソナタ ホ短調 K.304です。
バイオリンソナタとはソナタ形式という形式で作られた曲のこと。モーツァルトはバイオリンソナタをたくさん作曲していますが、(作品番号が複雑な為いくつとは言いづらいです)その内、暗い曲は本当に少ないです。
この作品はモーツァルトが22歳の時の作品です。なぜ暗い曲になっているのかは定かではありませんが、この年に最愛の母親を亡くしています。その影響もあるかもしれません。
母親は誰にとっても特別な存在だと思いますが、モーツァルトにとってもそれは同じことだったと思います。神童と呼ばれていたモーツァルトは小さいころから演奏旅行をしていたので、母親と離れて旅行することもありました。どちらかといえば、音楽家であった父親の方が存在がモーツァルトにとって大きかったかもしれませんが、家族を亡くした悲しみは大きかったと思います。
二楽章からなる、このソナタは1楽章アレグロという速いテンポで、2楽章はメヌエットのテンポでと指定があります。メヌエットとは三拍子の踊りの曲です。1楽章は少し険しさと悲しさ、2楽章はどこか懐かしい思い出を回想するかのような感じがします。ソナタ形式はピアノもバイオリンと同じ様に、メロディを弾いたりするので、ピアノも聴きどころがたくさんあります。特に2楽章は少し高めの音域で書かれていて、とても綺麗です。
ロシアのバイオリニスト、オレグ・カガンが、ロシアのピアニスト、スヴェトラーノフ・リヒテルと共演しているのがありました。モスクワにある、プーシキン美術館で演奏されたものです。
モーツァルトは明るい曲を数多く残しましたが、作曲家は、作曲した年齢や、その年の出来事などによって作風が変わってきたりするので、とても面白いです。
9月24日(火)新宿のバー、トロイメライでモーツァルトのバイオリンソナタホ短調 K.304を演奏します。バーでバイオリンソナタを演奏するのは珍しいと思いますので、お時間がありましたら、是非お越し下さい。
バイオリン講師 澤井亜衣