セルゲイ・ハチャトゥリアンを聴いて|一音に宿る意思と丁寧さの力

セルゲイ・ハチャトゥリアンのコンサートに行ってきました。

アルメニア生まれのヴァイオリニスト。シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで史上最年少優勝を果たし、一躍世界の注目を集めました。

以前から一度は生演奏を聴いてみたいと思っていた演奏家の一人で、今回ようやくその機会に恵まれました。

セルゲイハチャトゥリアンのコンサートプログラム

あくまで個人的な感想を記録として。

とても「丁寧な」演奏だと感じました。

一つ一つの音が、きちんと考えられている。
バイオリンだけでも、ピアノのハーモニーまで感じられるような演奏でした。
同じ「ラ」の音でも、こんなにも違う音質で演奏できるのか、と驚きました。

フレーズがしっかりとあり、一音一音に意味がある。
音をただ並べているのではなく、その一音がどこへ向かっているのかが感じられる演奏でした。

特に印象に残ったのが《ツィガーヌ》のフラジオレット。

今まで聴いたことのないような、とても丁寧なフラジオと独特の演奏でした。
技巧を「見せる」という感じではないのに、ものすごく説得力がある演奏で、
そこがかっこいいと思いました。

そして驚いたのが、ボーイング。
作曲家が変わると、ここまで変えるのかと思うほど、音の立ち上がりからボーイングが違う。
一曲目の最初の音から、すでに世界が違っていました。

これだけ細かく変化させるには、ものすごい集中力が必要なのだと思います。

演奏が進むにつれて、客席もどんどん引き込まれていきました。

二曲目からブラボーが起こり、拍手も、ただの「素晴らしかった」という拍手ではなく、演奏そのものへの尊敬が感じられるような、あたたかい拍手になっていったように思います。

アルメニアの作曲家バグダサリアンの作品を聴けたことも嬉しかったです。

うねるような音楽、そして激しさ。
こうした音楽を生で聴く機会は決して多くないので、とても貴重な時間でした。

アンコールもバグダサリアンの《ノクターン》でメロディが本当に美しく、最後にとても元気をもらいました。

そして、演奏だけでなく、ふとした所作にも丁寧さを感じました。
お辞儀をするときに顎当てにそっと手を添えるところまで、とても印象に残っています。

それくらい、いろいろなことを感じさせてくれる、価値のあるコンサートでした。

何より、演奏を聴いていて、ハチャトリアンという一人の音楽家の人柄や、音楽に対する哲学のようなものが伝わってきた気がします。

独特の世界観を持ったヴァイオリニスト。

また一人、尊敬するヴァイオリニストが増えました。

バイオリン講師 澤井亜衣