『もっと歌って』をどう伝えるか ― 抽象的な音楽表現を具体化する方法
最近、「抽象的」という言葉について考えることが増えました。
バイオリンのレッスンでは、抽象的な言葉を使う場面が多くあります。「もっと歌って」「情熱的に」「深い音で」など、感覚的には伝わるものの、その受け取り方は人によって違います。私自身も、これまで無意識にそうした言葉を使う傾向があり、気をつけながらレッスンをしています。おそらく普段の生活でも抽象的な言葉が多い気がします。
しかし、抽象的な表現だけでは、生徒さんが具体的に何をすればよいのか迷ってしまうことがあります。そこで最近は、音の変化を生み出す具体的な要素に置き換えて考えることを意識しています。
例えば、弓の速さや圧力、音の方向性、フレーズの山の作り方など、実際に変化を確認できる部分まで掘り下げて伝えるようにしています。
そのような取り組みをしていた時、生徒さんから「先生のレッスンは科学的ですね」との感想をいただきました。
そんなことを考えていた時に足を運んだのが、恩師のモルゴーアクァルテットのコンサートでした。

今回取り上げられたのは、スカンジナビアの作曲家たち。その中でも特に心に残ったのが、ランゴーのカルテットでした。
副題は「怒り」。怒り狂うような激しさ、熱狂、切迫感。これらの言葉が実際に楽譜に記載されているとのこと。音楽の中に、人間の強烈な感情がそのまま存在しているように感じました。
実際に聴いてみると、そのエネルギーの強さに圧倒されました。感情が激しく揺さぶられ、もしこのような感情を持った人が目の前にいたら、絶対に距離を置くだろうなと思ってしまいました。
コンサート後、先生にランゴーについて感想をお話ししました。先生によると、ランゴーの他の作品には違った表情があるそうです。近年再評価されているというランゴーの音楽は、現代の私たちの感覚にも響くものがあるのかもしれません。
最後に演奏されたグリーグの作品は、どこを聴いてもグリーグらしさがありました。ノルウェーの自然を思わせる爽やかさと安心感があり、ランゴーで激しく動かされた私の感情が、最後には穏やかに戻りました。
抽象的なものを具体的に伝えること。そして、言葉では説明しきれない抽象的なものを感じ取ること。その両方が、音楽には必要なのだと改めて感じたコンサートでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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大人のためのバイオリン教室 Nota
講師 澤井亜衣


